きみが死ぬまでそばにいる
 
 次の瞬間、驚きに目を見開いたのは、陸もその母親も同じだった。
 無理もない。言ったわたし自身すら、驚いていた。

「自分が何を言っているのか――分かっているの? あなたたちは血の繋がった……」
「では、お母さまはわたしの父との不倫を認めるのですね」

 わたしは静かに、いきり立つ女の耳元へと囁く。

「ご両親はご存じなのですか。兄弟は? 友人は? ご近所の方々は? きっと皆さん驚かれるでしょうね。こんなに立派な奥様が、実はただの愛人だったなんて」

 くすりと笑みをもらせば、女の顔から血の気が引いていくのが分かった。
 それを内心嘲笑っているなんて、どこまで醜い心根だろう。それでもこの女を黙らせるすべが、他に思いつかなかった。

「――取引、しませんか。お母さまが口外しないと約束してくだされば、わたしは誰にも話しません」

 私の中には、悪魔が棲んでいるのかもしれない。
 だけどそんなこと、今更誰が気にするものか。
 
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