きみが死ぬまでそばにいる
「ごめん……わたし、どうかしてた。なんでもないの、つれ回してごめんね」
わたしはどうにか理性を取り戻して、作り笑顔で取り繕う。けれどそんなずさんな代物で、陸が納得するはずがなかった。
「でも、先輩、別れないって……母さんに。どういう意味ですか?」
「違うの、それは。間違えたの」
白々しい笑顔に、見え透いた嘘を上塗りする。もはや、ただの悪あがきに過ぎない。
もう抑えられない。この感情からは逃げられないのだと、気づいてしまった。
「間違えるわけないでしょ。何かあったんじゃないですか? 母には何を言われたんです?」
「……」
「先輩? 答えて」
陸は自分の母親をあんな風に脅したわたしを、一切責めようとしない。考えてみれば当然のことだった。自分を騙し、あれだけ傷つけた女を一度も責めなかったのだから。
もう――限界だった。
「……わたし、きみに酷いことをたくさんした。それが悪いなんて思ってなかった。だけど、そんなわけないよね」
「どうしたんですか……急に」
「謝りたいの。今までわたしがしたこと、全部。わたしにできる償いならなんでもする。虫がよすぎるのも分かってるよ、でも」