きみが死ぬまでそばにいる
閑静な住宅街に、互いの声だけが響く。ここがどこだか、よくわからない。誰が見ているかも分からない。
それでも、今すぐ彼の胸に飛び込みたいと心が叫ぶ。そんな資格はないと、分かっているのに。
「……好きなの。きみが好き」
瞬間、陸は言葉をなくしたようにわたしを見つめた。
その戸惑いに揺れる瞳を見て、更に自嘲気味に言う。
「笑っていいんだよ。だって馬鹿みたいでしょう、今更……」
「笑えるわけ……ない」
やっとしぼりだしたかのような陸の声は、意外にも静かな怒気を含んでいた。
だってわたしは、陸が怒るところを見たことがなかったから。いつも理性的で、感情のままに怒鳴ったりしたところを見たことがなかったから。
「許せるわけない……どうして今更そんなこと言うんですか。先輩と俺は姉弟で、それだけは何があっても変えられない。どうにもならないのに、どうしろっていうんですか!」
「……それは」
不意に、陸の瞳から涙がこぼれた。
不謹慎にも、それが綺麗だと思う。
半分だけ同じ血が流れている弟は、そうとは思えないほどに清い心を持っている。醜い醜いわたしとは、比べ物にならないほど。
だから――だろうか。