きみが死ぬまでそばにいる
長谷部先輩の話を聞き流しながら、わたしは弟のことを思い出した。
部長の言った通り、彼は来なかったようだ。ここは兼部もOKだけど、水泳の練習が忙しいのだろう。
仕方ない――わたしは、そう思った自分が意外とあっさりしていることに気がついた。
最近では勉強に追われていたこともあって、弟を見かけることもなく、すっかり忘れてしまっていた。
あの日、感じた妬みも憎しみも、時間と共に薄れていく。それも悪くないかもしれない。悪い企みなんて、そうそう上手くはいかないのものだ、と――思った。
新入部員は女の子の二人組だった。二人は中学からの友達同士で、片方の子が旅行好きらしく、もう一人の子を誘ったのだとか。
実際、この同好会は旅行好きの集まりのようなものだ。丁度一年前、わたしも泉に誘われて入ったのだし。
もっとも、わたしの場合は今の部長――住吉先輩の存在が大きな理由でもある。だけど、この秘密は誰にも話さない。一生わたしの胸の中だけに秘めておく。
だって、泉は部長が好きなのだ。そしておそらく部長も。
いくらわたしの性格が悪くても、大切な人を傷つけてまで幸せになりたいとは思わない。だから何もしない。二人が幸せになるのを見守っている。
それで十分満足していた。だから。