きみが死ぬまでそばにいる
 
 手術の後、集中治療室で意識なく眠ったような父に少しだけ面会した。昨日わたしを嘲笑った嫌みな男の姿はそこにはなく、たくさんの管や機械に繋がれた患者がいるだけだった。

 突然のことに、理解はできても気持ちが追いつかない。
 もちろん、父が死んでも悲しいと思わない自信はある。ただ、昨日まで元気そうだった人間が、こんなに簡単に死の病に倒れることに恐怖を覚えた。
 どうなるんだろう、と漠然と思った。この男が死んだら? もしくは死ななかったら?

 わたしと陸の未来は、きっとこの男の生死に左右されるに違いない。

「お父さんはきっと大丈夫よ。強い人ですもの」

 多分、酷く落ち込んでいるように見えたのだろう。祖母はわたしの肩を抱き、優しく語りかけてくれた。
 わたしは力なく笑って目を伏せる――そうしなければ、見抜かれてしまいそうだった。わたしが父の心配など、微塵もしていないこと。大病を患った男に、同情心すら感じていないことを。
 
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