きみが死ぬまでそばにいる
一緒にいて欲しかったのは、単純に一人では気が狂いそうだったから。そんなことも素直に吐き出せないわたしは、結局病室で父と二人きりになる。
機械音だけが響く、無機質な空間。意識のないの父がわたしに語りかけることはない。わたしも何かを語りかけることはない。この男には何一つ恩義は感じてはいない。愛されてもいなければ、愛してもない。そんなわたしが、何故かここに足を向けてしまう理由は一つ――この男が目覚めてしまわないか、見張るためだと思う。
どうしてそんなことを、誰かに話せるだろう。血を分けた父親が、このまま目覚めないことを望んでいるなんて。
もしも、もしも。父が目覚めてしまえばわたしはきっとあの男に勝てない。陸とは引き離される……二度と、会えなくなる。
そして、それは現実になろうとしていた。先程病室にやって来た医師が、数日中に、快方に向かう可能性が高いと言ったのだ。
そう――だから、やるなら今しかない。
この時のわたしは、冷静な判断ができないほど我を失っていることに気づいていなかった。
この男さえいなくなれば、全てなかったことにできる。わたしたちは、ずっと一緒にいられる――そればかりが頭の中を支配して。
父の生命を維持する機械に繋がったいくつかの管。わたしは静かにそれに手を伸ばした。