きみが死ぬまでそばにいる
少し意外だったのは、そう言った陸の声がひどく冷めていたこと。
「この人のこと……庇うわけじゃないけど。きみはわたしと違って愛されてたよ」
「本当にそうなのかな。認知もされてなかったのに? 確かに父さんは俺を可愛がってくれたのかもしれないけど、籍は入れない、認知もしない。それでいて、先輩の家の財産も手に入れようとしている。あれもこれも、なんて叶うわけがない。父さんは自分の行いにきちんとけじめをつけるべきだった。結局――父さんには俺を息子と認めるよりも大切なことがあったんだ」
陸はまるで他人事のように、淡々と話した。そこには、信じていた父親に裏切られたような失望の色は見られなかった。彼にとってはもう、過去なのか。それとも、全て受け入れてしまったの後なのか。
「先輩と俺も、同じです。あれもこれもなんて、手に入らない。二人でいるために、捨てなければならないものがたくさんある。それが父親だというなら、仕方ないのかもしれません。でもこんな人間のために、先輩が手を汚す必要なんてないです」
「きみはこいつの本性を知らないから、そんなことが言えるの。やらなければ、こちらがやられる……これは、そういうもの」
綺麗ごとなんてもうたくさんだった。
わたしの意思を悟ったのか、陸は軽く息を吐いて言った。
「そこまで言うなら……じゃあ、俺が殺します」
「え?」
今、なんて言ったの――そう聞き返す間もなく、陸はわたしの側に立つと、父の周囲の機械をしげしげと眺める。
「これ、スイッチってどれなんだろう。まあ、適当に切ればいいか」
「ま、待って!」