きみが死ぬまでそばにいる
無造作に機械に触れた陸の手を、わたしは慌てて掴んで引き戻す。
「何やってるの!?」
「何って? 俺だって、父さんが邪魔なのは分かってますし」
「やめてよ……きみを殺人者になんかさせられない!」
自ら叫んで、ようやく我に返った。
そんなわたしに、陸は悲しそうに目を伏せる。
「俺だってそう思ってること、どうして分かってくれないんだ。先輩は、父さんを殺して……それで、どうするつもりなんですか。もう少し冷静になってよ」
「きみだって! わたしが止めなかったらどうするつもりだったの!」
「さあ……人殺しになって、捕まるか。それとも、一緒に逃げてくれますか」
投げやりに言って窓の外に目をやった陸を、わたしは思わず抱きしめた。
何故だか、そうしなければ彼が儚く消えてしまうような気がして。
「逃げるよ……どこへだって。でも、そんなこと言わないで」
「先輩が無謀なこと、やめてくれるなら」
「やめるよ、やめるから!」
どうかしていた。陸にこんなことを言わせてしまった自分をひどく恥じる。
全部――わたしのせい。弟はわたしとは違って幸せだったはずなのに。わたしが、何もかも狂わせてしまった。そして今だって、自分の行動が彼に与える影響を何も考えていなかったのだ。
「約束ですよ……」
そう言って笑った陸の顔を、直視することができなかった。