きみが死ぬまでそばにいる
その日、病院の屋上から見上げる空は、雲一つない快晴だった。夏の暑さの名残もとうに過ぎ去り、冬が始まる前の一番良い季節。沈みかけた太陽の光は、ただただ綺麗だと思えた。
しかしそんなただ中にあっても、わたしの心は少しも晴れなかった。あの後、屋上で話そうと言った陸についてきたはいいものの、胸がざわついて仕方がない。不安と、まるで袋小路に追い詰められたかのような焦燥。
「それで、父さんの容態はどうなんですか?」
人気のない屋上に着いてまもなく、陸から口を開いた。
それはわたしへの問いかけではあったが、おそらく予想はついているのだろう。どこか確認をしているようにも思えた。
「先生の話では……検査の数値も安定していて、この数日で意識が戻れば一気に回復に向かうって。後遺症とかはまだ分からないけど、多分……」
隠すことになんの意味もないので、わたしも医師に言われたことをありのままに話す。
すると陸は、自嘲するように笑った。
「やっぱり、そんな都合よくいくわけないか。俺、正直言うと……父さんがこのまま死んでくれたらって思ってました。先輩には大丈夫だとか、心配するなとか言っておきながら……結局、現実逃避してただけなんです」
「わたしもそうだよ。今だって……可能性ならゼロじゃない」
「そうですね。でも今から父さんが急変するとか、医療事故が起こるとか、そんな奇跡に期待するのは現実逃避以上に馬鹿げている」