きみが死ぬまでそばにいる
わたしたちは、しんみりしながらバス停までの道を歩いた。
お互い何を話せばいいのか分からず、沈黙が長く続く。もう会えなくなるのだと思うと、一瞬一秒が惜しい。それなのに、何故かどうでもいいような話題しか思いつかないのだ。
到着したバスに乗り込む陸を見送る時、わたしは込み上げるものを必死にこらえて笑顔を作った。
その時――不意に陸がわたしの耳に囁く。
「先輩。もしも――……、――――」
その時は、意味も分からずただ首を傾げた。
わたしが、彼の最後の言葉と微笑みの意味を知るのはずっと先のこと。
そうして離れたわたしたちは、長い時間を互いを知らずに過ごし、大人になる。
何もなかったかのように以前の日常に戻ったわたしは、いつしかかつて愛した異母弟も、彼と犯した罪さえも思い出さなくなっていった。