きみが死ぬまでそばにいる
父の葬儀はそれなりに立派に、しめやかに執り行われた。あんな男、野で焼いて生ゴミにでも出してやればいい――なんて本心は隠して、わたしは父を亡くして悲しみにくれる娘を演じる。
そんな時、参列者の中にひっそりと愛人の姿を見た気がした。しかし、げっそりと痩せてやつれきったその姿は、人違いかと思うほどに、かつて見た幸せそうな主婦の姿とは全く一致しない。それを当然の報いだと思うなんて、相変わらず自分は相当に歪んでいると思う。
けれども、かわいそうなのは陸だ。まだ高校生だった彼に、あの父母と暮らす以外の道があったとは思えない。あれからどうしているのだろう――そう思って参列者の中を探したが、とうとう異母弟の姿を見つけることはできなかった。
別に、今更会ってどうこうしようなんて思ったわけではない。わたしたちが離れてから、既に五年が経った。一つ年下の弟は、既に成人した大人の男。彼女の一人もいるだろうし、わたしにだって結婚を考えている彼氏がいる。
だけど、わたしたちの父親が死んだ。そのお祝いに、顔くらい見せてくれてもいいじゃないか。