きみが死ぬまでそばにいる
 
「じゃあ、今までパパ以外には何人と付き合ったの?」

 先程から相当に際どい質問をしているということを、娘は全く気づいていない。適当な嘘をついた方が良かったのかもしれないが、娘の無邪気な好奇心に、つい本当のことを話した。

「……一人、かな」
「ふぅん……ママ、その人のこと今も好きだったりして」
「まさか、どうして?」
「だって今、なんか間があったもん」

 そう言った娘に思わず笑ってしまったのは、あまりにも見当違いのことだったから。
 元彼のことなど、今の今まで忘れていたくらいだ。かといって、動揺した本当の理由など、娘には絶対に話すことはできない。

「気のせいよ。ママが好きなのは、未希とパパだけだもの」
「本当にぃ?」

 夫とは後輩に誘われた合コンで会って、数年付き合った後、籍を入れた。それは紛れもない事実で、わたしは娘と夫を愛している。ただ少し、隠していることがあるだけ。

「もちろんよ」

 まだ少し疑っている娘に、満面の笑みで微笑んでみせる。
 取り繕うのは得意だった――昔から。
 
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