きみが死ぬまでそばにいる
 
 ――先輩。もしも父さんが俺を認知しなかったら、その時は俺達の勝ちです。

 彼がそう言って、わたしの元を去ったのは、互いに高校生だった頃。
 結局、父はわたしたちが別れたのに安心しきって、彼を認知しないまま死んだ。
 どこまでが偶然だったのか、わたしには分からない。もしかしたら、彼は……と考えたこともあるが、それは多分知る必要のないことだ。
 父の大切なものを奪って、のうのうと暮らしている、この日常がわたしの幸せ。
 復讐は形を変えて叶ったのだ。だから、それ以外には何も知らないふりをする。それでいい。



 わたしたちの結婚式の一月前に、彼の母親は自殺した。だからもう、わたしたちの秘密を知る者はない。
 わたしたちはどこにでいる普通の夫婦であり、家族。
 たとえ地獄に堕ちようとも、この秘密は墓の中まで持っていくと決めている。
 
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