きみが死ぬまでそばにいる
絡まる
春が終わり、次第に蒸し暑い季節になった。制服のブラウスがじとりと身体に張りついてなんとも言えない不快感を覚える。
その日は午後から移動教室で、わたしは泉と実験室までの廊下を歩きながら、少しだけ額に浮かんだ汗を拭った。
「あ、椎名くんだぁ」
先に気づいたのは泉だった。
職員室の前、丁度退室してきた陸と目が合う。
「先輩、こんにちは」
わたしたちを見つけると、軽く微笑んで挨拶をしてきた陸は、爽やかで、感じもよくて、欠点などどこにも見当たらない。
それが余計、わたしを苛立たせる。
「それ、入部届?」
泉が陸の持っていた紙に目をとめると、陸は少し困った顔で笑った。
「はい……水泳部の顧問の先生が熱心で、渡されて。なかなか諦めてくれないんですよね」
「私たちに気がねしなくてもいいんだよ? 兼部でも大丈夫だし、中学の時はすごい選手だったのに辞めちゃうなんてもったいないよ、ね、紗己子?」
陸はずっと続けていた水泳を辞めたらしい。しかしそれでもって、うちの同好会に入部してきた真相はよく分からなかった。
「先輩が誘ってくれて、楽しそうだなって思ったから」――と、陸はそう言っていたけれど。
「……わたしは椎名くんのやりたいことを応援するよ。水泳でも、テニスでもバスケでも」
「そうですか……」
「もちろん、わたしたちと一緒に部活したいって思ってくれるならそれも嬉しいよ」