きみが死ぬまでそばにいる
陸は一瞬躊躇するように視線をおよがせた後、「実は……」と恥ずかしそうに告白した。
聞けば彼は、先日の中間テストが散々だったらしい。全教科で追試を言い渡され、更にはこのままでは進級が怪しいと言われたとか。
これまでの人生で勉強でつまずいたことがないわたしは、少し同情した。
一方で、そんなことか、とがっかりもした。成績が悪いくらい、大した不幸でもない。そもそもそんなことで悩めることが、恵まれている証拠だ。
「わたし、これでも勉強は得意な方なの。部活の時間でよければ教えるよ」
そう言ったのは、もちろん同情からではない。悪意という下心あっての言葉。彼の心に入り込むチャンスだと思ったのだ。
「え……いや、でも、悪いです」
「追試、だめだったら、旅行も行けなくなっちゃうんでしょ。それじゃ、わたしが嫌なの。椎名くんがいなきゃ、つまんないよ」
瞬間――少し言い過ぎた、と思った。綺麗事が過ぎると、どこか胡散臭くなってしまう。
しかし、そんな心配は全く必要なかった。
陸の反応を伺うと、普通に感動したようにわたしを見つめてきた。純粋なのか、馬鹿なのか。