きみが死ぬまでそばにいる
「じゃあ、またね」
電車がわたしの家の最寄り駅に到着する。いつものように陸に手を振って、電車を降りようとした時だった。
「先輩」
不意にわたしを呼び止めた陸は、いつもに増して真剣な顔だった。
「この追試が終わったら、話したいことがあるんです」
「……話?」
陸のあまりに真剣な顔に、どきりとする。
いくらでも話す時間はあったのに、改めて話したいこととはなんだろう。
「……いいよ。じゃあ、来週部室で待ってるね」
まさか、わたしの素性がばれてしまったのか。そんな動揺は隠して、あくまで平静を装って答えた。
この時のわたしは、本当に若くて、浅はかで、愚かで、どうしようもなかった。陸のことなんて、何も分かってはいなかったのに。
そして、わたしは思い知る。
わたしが手を伸ばした禁断の果実の、その蜜の味を。