きみが死ぬまでそばにいる
 
 しかし、翌週になっても陸は部室には現れなかった。
 追試は終わっているはずなのに。約束を忘れてしまったのだろうか、と思いながらわたしは少しほっとした気分だった。
 やはり大した話ではなかったのだ。部活に来ないのは、友達と遊んでいるか何かなのだろう、と思った。

「そういえば、最近椎名くんに会った?」

 泉と一緒に顔を出したある日の部活、二人で旅行の計画を考えていると、泉が唐突に言った。

「ううん、どうして?」
「だって、紗己子が一番椎名くんと仲いいでしょ」

 端からはそう見えるようだ。それはわたしの狙ったことでもあるし、シナリオとしては順調なのかもしれない。だから、これは喜ぶべきことなのだろう。

「そうかな? 可愛い後輩だとは思ってるけど」
「本当にそれだけ?」
「もちろんだよ」

 わたしが陸に勉強を教えることになってから、泉はわたしたちの仲を以前に増して怪しむようになった。
 確かに、仲の良さを演じようとしているのはわたし自身だし、他人に勘違いされるのは仕方のないことなのかもしれない。しかし、わたし自身にそんな気がない以上、否定するのも次第に億劫になってくる。
 
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