きみが死ぬまでそばにいる
「……!」
柔らかいものが、わたしの唇に触れた。
ほんの一瞬の不意打ち、それはすぐに離れて、何事もなかったかのように目の前にある。
「し……椎名……くん?」
だけど、確かに残る感触。
今、間違いなく、わたしたちは唇を合わせた。
「心配しなくても、先輩の秘密は誰にも言わないよ。先輩が誰を好きでも、俺は先輩が好きだから」
恋は盲目とは言うけれど、陸が好きなのは見せかけのわたし。本当のわたしは、どす黒い感情で溢れ返っている。
だから、少し想像してしまった。
姉と弟――全てを知ったら、きみはどんな顔で絶望するだろう、と。
わたしの中には、いつもぽっかりと空いた空洞がある。
不完全なそれを繕う何かを、わたしは遂に見つけた気がした。