きみが死ぬまでそばにいる
確信に変わった途端、父に対する憤りが沸々と沸き上がる。
本妻の子と愛人の子を同じ高校に通わせて、堂々と入学式にも現れるなんて、どういう神経をしているのだろう。
わたしが何も知らないと思って舐めているのか、それとも単にわたしがここに通っていることを知らなかったか。
多分、その両方だと思う。
昔から父は、わたしに興味がなかった。
一緒に遊んでもらったこともなければ、誉めてもらったこともない。
親戚の集まりの時だけ、白々しく母とわたしの名を呼んだ。
きっと今、父は母が死んでせいせいしているのだろう。
母の葬儀の時だって、涙一つ流さなかった。それらしく神妙な顔をしてい
たって、わたしには分かる。
汚らわしい男。初めから、母の実家の援助だけが目当てだった。
母を死なせておいて、自分だけがのうのうと幸せになるつもり?
許さない。そんなこと、絶対に。
「ねえ、大丈夫?」
「え? なにが」
「なにがって……さっきから、ずっと上の空だったでしょ」
気づけば、駅の改札口だった。わたしと泉の家は逆方向にあるから、いつもここで別れる。
「ごめん。ちょっと考え事してた」
「もう、紗己子ってば。心配したんだからね」
母が死んで間もないことを泉は知っているから、いつもこうして気遣ってくれる。優しい子。わたしが心許せる数少ない友人だ。