きみが死ぬまでそばにいる
「ありがとう。もしかして、気を遣わせちゃったかな……?」
しばらくして戻ってきた陸から飲み物を受け取りながら、彼の反応をみる。
「いやっ……そんな、全然!」
陸はわずかに顔を赤らめて視線を外した。
それだけで、彼の気遣いが分かる。
「でも、どうして喉が渇いているって分かったの?」
「そんなに大層なものじゃないんですけど、電車の中で流れてたジュースのCM、めっちゃ見てたから。なんとなく、そうなのかな……と」
電車のCMは覚えている。新発売の清涼飲料水が美味しそうに見えた。でも、それだけだ。無意識のうちに、そんなに凝視していなんて思わなかった。ていうか……恥ずかしい。
「え? そ、そうだっけ?」
陸といると、何故か調子が狂う。
ぼうっとしているようで、人のことをよく見ていて、鋭い。わたしが部長を好きなことも見破ったし、本来は油断ならない相手のはずなのに。
「それより、休んだら何から回りますか? やっぱり、人気のおばけ屋敷? 先輩、怖いのは大丈夫ですか?」
無邪気にパンフレットを広げる陸は、ごく普通、年相応の少年にしか見えない。分かっているのに、つい――気がゆるむ。