きみが死ぬまでそばにいる
 
「大丈夫だよ。ホラーとか好きだし。ああ、でも、結構並ぶんじゃない? 他のをあまり回れなくなっちゃうかも」
「そこは気にしなくて平気です。今日のチケットは、待ち時間不要のプラチナチケットなんで」
「えぇ? そうなの?」

 そういうチケットの存在は聞いたことがある。でもあまりに値段が高くて、買う人は少ないとか。

「なんだか悪いなあ。いくらだったの? 後で払うね」
「そんな、気にしないで下さい! 父の仕事の関係で、貰ったんです。俺にそれが回ってきただけで……」
「椎名くんのお父さまって、お仕事は何をされてるの?」
「あまり詳しく聞いてはいないんですけど、商社だとか」
「へぇ、チケット貰えるなんて羨ましいなぁ。わたしもそういう父親がいたらよかったのに」
「はは……そうですかね。仕事が忙しくて、小さい頃はあまり遊んで貰えなかったし。その埋め合わせなのかも」

 照れ臭そうに笑う陸を見て、聞かなければ良かったと思った。
 この無垢な笑顔はいっそ羨ましく感じる。どうしてこんなにもわたしと違うのか。
 こういう不公平は、この世の常なのだろうか。
 
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