きみが死ぬまでそばにいる
「今日、誘って良かったです。楽しんでもらえるか、少し不安だったから……」
「大丈夫だよ。わたし、きみのこと結構好きなんだよ?」
付き合った経緯のことで不安がる陸を安心させようと微笑めば、彼は急に真面目な顔をした。
「そんなこと言われたら、俺、勘違いしちゃいます」
「……勘違いしても、いいよ」
車内は頂上に差し掛かる。見つめた陸の瞳がゆっくりとわたしに近づいてきた。
水族館の時のような不意打ちではない。これはわたしが選んで、受け入れた。血の繋がった弟の唇。
初めは触れるようなキス。それはいつの間にか深くなって、息を紡ぐのさえ苦しくなる。わたしはただ必死に陸に応えた。
思考が溶けていくように、何も考えられなくなる―――。
しばらくして離れた二人の唇を、銀色の糸が繋ぐ。それは何故かひどく背徳的で、改めて自分の行為を思い出させた。
禁断の果実の魅力に取り憑かれた愚かな女。それでもいい。
この身がどこまで堕ちたとしても、わたしが憎んだ全てに復讐を果たせるなら。