きみが死ぬまでそばにいる
無事に問題を解いて席に戻れば、一気に安堵感がやって来た。一応、わたしは推薦も狙っている。受験まではまだ一年以上あるとはいえ、手を抜くことはできない。
こんなこと、わたしらしくもない。陸なんかに気をとられるなんて、馬鹿馬鹿しいことだ。
とりあえず、何も知らないふりをしておけば良い。知らなければ、問いただす理由もない。
別にわたしは、陸のことが好きで付き合っているわけじゃないんだから。彼がどこで誰と何をしていようと、気にすることじゃない。
わたしはそこできっぱりと考えるのをやめた。おかげでその後は、授業中に集中力を失うこともなく済んだのだが――それも、放課後になるまでのことだった。
その始まりは、泉の言葉から。
「紗己子ごめん! 今日、部活行けなくなっちゃったの。先輩に伝えといてもらえる?」
「いいけど、どうしたの?」
最近では日に日に暑くなり、夏休みも近くなってきた。
夏休みに行われる旅行は、旅行研究同好会最大のイベントといってもいい。泉とは、そのプランを一緒に考えるという約束をしていた。
「委員会の仕事、今日までだったの忘れてたの。本当にごめんね」
手を合わせて必死に謝る泉に、「気にしないで」と言って、わたしは一人で部室に向かった。
泉は今年度から美化委員会に入っている。これまでは忙しそうにしている泉を呑気に眺めているだけだったけれど、わたしも推薦を狙うなら委員会にでも入った方が良いのかもしれない、と考える。
それか、生徒会活動とか。どうせ、暇な部活だし――時間ならある。
そんなことを考えなから部室の前に着いて、わたしはいつものように扉を開けた。