きみが死ぬまでそばにいる
 
「あっ! 菅原先輩、こんにちは!」

 瞬間――弾けるような笑顔がわたしを迎えた。

「……早いね、天童さん」

 わりと最悪なタイミング。疑惑の渦中にいる人物に鉢合わせするなんて、考えずにはいられなくなる。しかも、部室には二人きり。
 それでも最初は、頑張って忘れようとしたけれど。

「……今日は皆川さんと一緒じゃないんだ?」
「そうなんですよ。茉奈ちゃんは、家の用事で来れなくって」

 一年生部員は、陸の他には二人の女子。それが天童さんと皆川さん。旅行好きな皆川さんが仲良しの天童さんを誘った経緯もあり、二人はいつも一緒に行動していた。
 部活に来る時も、二人は一緒。少なくともわたしはそれしか見たことがない――だから、余計な邪推をしてしまう。
 もしかして、陸を待っているんじゃないの?

「天童さんって、彼氏とかいるの?」

 わたしは唐突に切り出した。
 やめておけばいいのに、何故か地雷原に踏み出そうとするの止められない。
 これ以上、陸の浮気疑惑については考えないようにする。そう決めたはずだったのに。

「えっ!? あたしですか? いないです!」
「そうなんだ? 意外だね、可愛いのに」

 お世辞ではない。天童さんは取り立てて美人というわけではないが、愛嬌がある可愛い系だと思う。積極性もある。
 だけど、陸の好みだろうか?
 
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