きみが死ぬまでそばにいる
「いえ、あたしなんて全然。先輩こそ、付き合っている人とかいるんですか?」
「……いないよ。今はそういうの、いいかな」
「本当ですか?」
否定したわたしを、まるで疑うように見る。陸との関係を知っているみたいに。
「あたし、付き合ってはいないけど……好きな人はいます」
直感する。おそらく陸のことだ。
陸が好きで彼を見ているのならば、泉のように陸の気持ちにも気づくに違いない。だからわたしを敵視する。
もちろん、表面上は笑っている。それはわたしも同じだから、よく分かった。
「そうなんだ、片想いなの?」
何も気づかないふりをして言えば、天童さんは「今はまだ」と小さく言い、そして――――
「でも絶対、振り向かせて見せますから。だから、その気がないなら陸くんのことはもう放っておいてあげて下さい」
「ごめん……よく分からないけど、天童さんは椎名くんのことが好きってこと?」
部室の扉が開いたのは、わたしが取り繕った笑顔で、首を傾げて見せた時だった。
「あ……陸くん……」
陸の姿を見た途端、天童さんは何事もなかったかのようにわたしから顔を反らした。
「先輩……こんにちは。天童も来てたんだ?」
陸も陸で、わたしたち二人を見てどこかばつの悪そうな顔をする。
やはり、キスをしていたという泉の話は、見間違いでもなんでもなく、本当の話のように思う。少なくとも、何かある。