きみが死ぬまでそばにいる
 
「珍しい組み合わせでしょ? わたしたち」
「確かに、そうですね。天童はいつも皆川と一緒だから」

 わたしは微笑んで、陸を部室の中に招き入れる。
 そして、部室の中央に並べられた机の、天童さんの隣の席を敢えて勧めてあげた。

「いつも一緒なんて、大げさだよ。確かに、茉奈ちゃんとは小学生からの付き合いだけど」
「……そんなに長いの?」
「はい。小学生の時に、スイミングスクールで仲良くなって、それからずっとなんです」

 天童さんは、わたしにも愛想よく答えた。先程の挑戦的な発言は幻かと思ってしまうほど。
 それでも、わたしと違って純粋なんだろう。表面上わたしと陸は付き合いを隠しているから、彼女には好きな男の子をその気もなく誘惑する悪女に映る。
 ある意味それは事実だが、そんなことに憤って、先輩であるわたしにも怯むことなく向かってきた。純粋で、無垢で、馬鹿正直。
 それはわたしが捨ててきたものなのに、どうしてこんなに苛立ってしまうのだろう。

「スイミングかぁ、懐かしいね。わたしも少しやってたよ。とっくに辞めちゃったけど」
「あたしは、中三の夏までやってました」
「もしかして、選手コースとかで泳いでたの? すごいね」
「まぁ……でも、市レベルでそこそこな感じだったし。先がないなって思って辞めました。だから、陸くんみたいな才能が羨ましかったです」
 
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