きみが死ぬまでそばにいる
整える
落ち着け――わたし。何やってるんだ。
陸は、わたしにとって単なる復讐対象。それ以前に、血の繋がった弟で、恋愛対象にはなり得ない。今の関係は、ただの見せかけ。偽物。好きだなんて、全部嘘。
それなのに、こんな――誰がどう見たって当てつけみたいなのは、どうかしている。
今はわたしがすべきなのは、好きでもない男にやきもきして腹を立てることじゃない。
そんなことは、十分分かっている。
「先輩っ……待って下さい!」
その時、陸がわたしを追いかけて部室から出てきた。
静かな廊下には、陸の声がいやに大きく響く。聞こえなかったふりもできなくて、わたしは仕方なく立ち止まる。
「 誤解です。キスしてたように見えたかもしれないけど……あれは、天童が強引に」
ああ、本当にしたんだ。と冷えた頭がぼんやりと思った。
「別に言い訳しなくてもいいんだよ? 天童さんて、可愛いじゃない」
違う。こんなことが言いたいんじゃない。
だけど、なんと言えば正解なのか。
分からないまま、わたしの口は愚かな言葉ばかり吐き出す。
「お似合いだと思うよ。彼女もきみのこと好きみたいだし」
「確かに告白はされましたけど、きっぱり断りました。俺が好きなのは、天童じゃありません。先輩なんです」