きみが死ぬまでそばにいる
近づく
入学式の翌日。早朝の生徒玄関前で、さっそく新入生に対する部活勧誘が始まる。
派手な運動部の勧誘の横で、わたしたちの部は地道にビラ配りを続けていた。
旅行研究同好会――実は部ですらない、同好会。耳慣れない名前ではあるが、活動内容はその名の通りだ。
「旅行研究同好会でーす。よろしくお願いしまあす」
柏木泉――明るくて、可愛くて、優しくて、純粋で。非の打ち所のない、わたしの友人が配るビラは、次々に捌けていく。
「紗己子も配りなよ。結構楽しいよ? プラカード、代わるから」
隣でプラカード持ちに徹するわたしに、泉は屈託なく言った。
「いいよ。今日はもう終わるし……」
始業時間まであと十分に迫り、登校してくる新入生はほとんどいなくなっていた。わたしたちもそろそろ引き上げなければ遅刻になってしまう。
「じゃあ明日は、交代ね」
「うん。ありがとう」
本当はプラカードを持って立っている方が楽だから嬉しい、なんて言ったら泉はどんな顔をするだろう。
言えるわけない。だけど、取り繕うことだけが得意なわたしは、いつかこの友人に全てを見透かされてしまいそうで、時々怖い。
今、この瞬間も、わたしの中にはどす黒い感情が渦巻いているというのに。