きみが死ぬまでそばにいる
 
「……先輩」

 吐息が鼻にかかりそうなくらい、二人の顔が近づいた。
 わたしは、周りの乗客に聞こえないように、陸の耳に口を寄せる。

「……好きだよ」

 囁くように言えば、うぶな陸はすぐに顔を赤らめた。

「俺も……です」
「ふふふ」

 わたしは穏やかに微笑んだ。
 もう邪魔者もいなくなった。全て、上手くいっている。
 そろそろかな、と思う。

「ねぇ、椎名くん。お願いがあるんだけど」
「なんですか?」

 無邪気に首を傾げる陸に、わたしは言った。

「今度、お家に遊びに行ってもいい?」
「え? うちですか? 別に構わないですけど……」
「本当? 嬉しいな。楽しみにしてるね」

 こうして寄り添っても、人の心なんて見えやしない。そんな不確かなものを信じているなんて、本当に滑稽で笑える。

「椎名くんの育った場所を、一度見てみたかったの」

 それはある意味、嘘偽りない本心だった。



 ――退屈な茶番劇はもう終わり。さあ、復讐を始めましょう。
 
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