きみが死ぬまでそばにいる
壊す
「紗己子」
ある日のこと。部活を終えて家に帰ると、迎えたのは祖母ではなく父だった。
まともに顔を合わせるのはどれだけ振りだろう。あまりにも久しぶりなので、わたしの父親はこんな顔だったか、とまじまじと見つめてしまった。
「なんだ? 驚いたような顔して」
「……別に。久しぶりだね、お父さん。何しに来たの?」
貼り付けたような笑顔で、冷たく答える。
しかし、父はそんなわたしにすら鷹揚に笑ってみせた。
「おいおい、娘の顔を見にくるのに理由がいるのか?」
これだ、この顔。この男が厄介な理由。一見、人当たりだけは良い。だからみんな騙される。母も、祖父母も、かつてのわたしも。
「それに今日は母さんの月命日だろう。今まで仕事の都合がつかなくてすまなかったが、今日はみんなで母さんを偲ぼう」
何を今更。白々しい。
この男の言動は最高にわたしを苛立たせる。さすが陸の父親。とはいえ、あの子とは質の違う気持ち悪さだけれど。