きみが死ぬまでそばにいる
陸の家は、わたしの家から普通電車でたった二駅のところにある、高層マンションだという。駅からは徒歩圏内で、快速電車も停まる駅の周囲は、わたしの家の近所よりはよほど栄えている。
駅前にはシネコン併設の大型ショッピングセンターがあり、わたしたちは先にそのレストラン街で昼食を済ませることにした。そして、映画を見るという定番デートの後に、陸の家に向かう予定だ。
わたしの心は、変に高ぶっていた。これまでは全部復讐への準備で、これからやっと全てが始まり――終わる。そう思うと、何故か少し息苦しい。
大丈夫。きっと全部上手くいく。
さっきからそう言い聞かせ続けているのに、息苦しさは消えるどころか増すばかり。
「あまり好きじゃなかったですか?」
レストランの中、パスタを食べる手を止めて、陸が心配そうにわたしを見た。
彼が選んだのは、洒落た雰囲気のイタリアンのお店。年下の癖に、生意気だとは思う。
「ううん。そんなことないよ。美味しい」
わたしは微笑んで答える。確かに味は美味しい。けちをつけるところなんてない。
「そうですか、良かった。ここのボロネーゼ、昔から大好きなんです」
陸は無邪気に言う。わたしに気に入ってもらえたのが嬉しくて仕方ない、そんな顔で。