きみが死ぬまでそばにいる
「これ、水泳の大会? 優勝したんだ、すごいね」
家族写真の他に多かったのが、陸が水泳をやっていた時の写真だ。まだ幼い陸が優勝トロフィーを持ってはにかんでいる。
「……可愛いな」
わたしは、無意識に呟いた自分に気づかなかった。
「せ、先輩!? 大丈夫ですか!?」
「え? 何が?」
「何って……」
目の前で狼狽する陸を見た時、自分の顔に違和感を覚える。不思議に思って手を伸ばすと、触れた指が濡れていた。
「あれ、わたし……変だな。ごめんね。なんでも、ないの……」
泣いている? わたしが? 分からない。理由なんてない。
自分で自分に戸惑って、心配そうに覗きこむ陸から顔を背けた。
とりあえず落ち着こう、そう思って。
だって、こんなところで意味不明に泣いている場合じゃない。わたしは今から目の前の男を傷つけるために、そのためだけに、今までやってきたのに。