きみが死ぬまでそばにいる
 
「先輩、泣かないで」

 しかし、陸の言葉と共に、わたしは彼の方へと引き寄せられる。

「ごめんなさい。俺が無神経でした、お母さんを亡くしたばかりだったのに」
「違うよ……違うから……」

 後ろから抱きすくめられた腕の中で、わたしは必死に言う。
 同時に、遠くで玄関の扉が閉まる音が聞こえた。

「好きです、先輩。お母さんの代わりにはなれないかもしれないけど、俺がそばにいます。これから先も、ずっと」
「……違うの。わたし」

 わたしは、あなたのことなんか好きじゃない。
 しかしそれは、言葉にならなかった。
 陸が唇が、開きかけたわたしの口を塞いだからだ。

「……っん」

 それは今までで一番荒々しく、わたしの奥を揺らした。
 何もかも、全部、忘れそうになる。
 彼がわたしから奪ったものを、わたしのつみを。
 
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