きみが死ぬまでそばにいる
「おかえりなさい、サキちゃん」
暗くなる前に帰宅したわたしを、優しい祖母はいつものように迎えてくれた。
涙はとうに乾いていたとはいえ、何かを悟られそうな気がしてどきりとする。
「……ただいま」
「もう少しでご飯ができるから、少し待ってちょうだいね」
玄関の扉を開けてくれたエプロン姿の祖母は、そのまませわしなくキッチンへと戻っていく。最近、少し腰が曲がってきたように見えるが、わたしを可愛がってくれた優しさも笑顔も何も変わらない。
復讐は終わった。この先もいつも通りの穏やかな日々が続いていく。それでいいじゃないか。
母の無念は晴らされた。だからわたしも、もう全てを忘れて前に進むことにする。
その夜、毎日続いた着信履歴が遂に途切れた。当然のことだと思いながら、どこかで寂しく思う自分がいる。そんな自分に苦笑しながら、わたしは全ての履歴を削除した。
明日からは、いつも通りの日々。陸に出会う前の、心穏やかな日常に戻る。
今はこの胸を覆う痛みも、時間と共に消え去るだろう。
この時はまだ、そんな都合の良いことを考えていた。