きみが死ぬまでそばにいる
「でも部長が遅刻ぎりぎりなんて、珍しいですよね。何かあったんですか?」
「電車が遅れてさ。人身事故」
「ああ……最近なんだか多いですよねえ。私もこの間……」
すぐ近くにいる二人の会話を遠くに聞きながら、わたしは荷物を持って歩き出した。
お似合いの二人。邪魔をする気にもならないほど。
始業時間まであと五分。今日は一限から数学の小テストがある。準備はしてきたけれど、見直す時間があるに越したことはない。
来週には校内模試もある。気を引き締めておかないと――と、思ったその時だった。
「あっ……紗己子っ!」
泉がわたしを呼んだ。しかし、振り向いた時にはすでに遅く。
死角になっていた角から飛び出して来た人影に、わたしは思わず目を瞑った。
「――っ!」
互いの肩がぶつかってよろめいた次の瞬間、聞こえてきたのは焦ったような男の子の声だった。
「すみません! 大丈夫ですか!?」
目を開けると、そこには不安にわたしをのぞき込む真新しい制服の一年生。
その瞬間、目が離せなくなった。
彼だ――父のもう一人の子供。わたしの弟。