きみが死ぬまでそばにいる
 
「……なんですか?」
「話があるから、来て欲しい」
「……でも」
「時間はとらせないから」

 初めは近づいてきた部長に警戒心を示していた泉も、迷ったようにわたしの方を見た。

「わたしなら、大丈夫だよ」

 泉が心置きなく部長のところへ行けるように微笑む。それから、耳元で「仲直りしておいで」と囁けば、泉は申し訳なさそうにしながら頷いた。

「本当に、ごめんね」

 「いいよ」と言って手を振る。泉と部長が出ていくのを見送ると、部室にはほとんど人がいなくなった。一人を――除いて。
 しまった、と咄嗟に思った。陸は旅行の資料を座って眺めていて、帰るには彼の横を通らなければならない。
 完全に無視するのもなんだか変だ。軽く挨拶だけかけて、すぐに帰ろうと思った。

「椎名く――」
「旅行、楽しみですね」

 陸の横を通った時、声が重なってわたしのそれはかき消された。
 目があった瞬間、思わず息をのんだ。目の前の陸は――笑っているのに、どこか有無を言わせぬ雰囲気がある。
 
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