きみが死ぬまでそばにいる
「そっ……そうだね」
わたしは声が上ずるのを抑えられなかった。一度は落ち着いたはずの心臓の鼓動が、再び激しく脈打つ。
「俺、静岡って行ったことなくって。先輩はありますか?」
「……ある、けど」
「へえ! どんなところでした?」
当たり前のように何気な会話をしながら、陸は机の上の荷物を片付け、自分の鞄にしまう。そして立ち上がると、自然にわたしの隣に立った。
「先輩? どうかしました? 眉間にしわ、よってますよ」
困惑するわたしをよそに、陸は茶化すように笑う。
「……どういうつもり?」
わたしは我慢できなくなって言った。
確かに、こうして一緒にいるのは普通の事だった。だけど、それは昨日以前までの話だ。
こんなのはおかしい。わたしは彼を騙して傷つけた。それなのに、彼は何事もなかったかのようにわたしに笑いかける。
ありえない。いっそ、気味が悪い。