きみが死ぬまでそばにいる
それは最初、生理のせいだと思った。
「わたし、寝るから」
旅行の日、早朝に出発した新幹線の中で、わたしは早々に宣言した。
それは当然のように隣の席に座る陸に対するもので、暗に「話しかけるな」という意味であったが、彼は案の定にこやかに了承した。
いつも――こうだ。陸は彼に付き合ってさえいれば、それ以上のことは求めなかった。これまで通りの交際の継続……それ以上でも以下でもない。わたしを脅して従わせたいのなら、例えば性的関係でも強要すればいいのに、それもない。
わたしからすれば、気味の悪いことこの上なかった。本当の目的は? 一体何を企んでいる? わたしをこうして困らせ、悩ませることだけが、本当に彼の復讐なのか? 直接訊ねてみたこともあるが、陸はいつものらりくらりと話題を逸らすのだ。
しかしながら、昨晩から生理のせいか体調が思わしくないわたしにとって、移動中だけでも陸と白々しい会話をしなくて済むのは、せめてもの救いだった。
できれば行きたくなかったこの旅行、それでも来てしまったのは陸からの無言の圧力のせい。何故か「恋人」という形式にこだわる陸が、このイベントを見逃すはずがなかった。
別に今更、暴露したいならすればいい。そう思うのとは裏腹に、わたしは陸に従うように動いていた。