きみが死ぬまでそばにいる
「ごめん。心配させてなんて知らなくて。今日、あの日だから……」
「ああーなるほど。旅行と重なるなんてついてないね。でも、そっか……」
「……?」
「いや、もしかしたら、ね。椎名くんと上手くいってないんじゃないかなあ、なんて、余計なこと考えちゃったり。私の勘違いならいいんだけど、最近元気ないように見えたから」
泉の純粋な瞳を見ていると、自分が情けなくなる。こんな友人に、わたしはまた嘘をつかなければならない。嘘を隠すための嘘を。
「……椎名くんは関係ないよ。ちょっと最近夏バテしてたからかな……昔から暑いの苦手でさ。体調崩しやすくなっちゃうの」
「そっかあ、気を付けなきゃね。でも、もし何かあったら遠慮なく言ってね。紗己子には助けてもらったし!」
泉は言ったが、わたしなんて何もしてない。アドバイスでも何でもない、適当な言葉をかけただけ。こんな風に優しくしてもらう理由なんてないのだ。
「ありがとう。頼りにしてるね」
裏腹な言葉と心。嘘ばかりついていると、時々……自分がどこにいるのか分からなくなる。
不意に――鳴りを潜めていた頭痛が疼きだす。お前に感傷にひたる権利はない、と言われている気がした。