冒険者の上下

翌日
　「姫、今日から稽古始めますよ。まずは私を殺す勢いでやってみてください。」
黒く闇の中にいるような瞳で見る目は冷たく、まるで本当に戦っているような緊迫感であった。

　「わ、わかったわ！私はできるわ！」そう言いながら、剣をしっかりと構えた。
　すると、剣を構えたと同時に彼女の攻撃は始まった。

　ｷﾝｯ　ｶﾞｯｼﾞｨｰ　ｷﾞﾘｨｯｷﾞﾘｷﾞﾘｯ
　ヘルは思った。所見でやるにしては動きが良すぎる。　と。
　ヘルは思った、天才肌というのもあるだろう。しかし、それにしては慣れた手つきをしている。　　彼女はどこで育ったのか　　と。


そして、ヘルからの攻撃も始まった。
　「あら。ヘルは攻撃しないんじゃなくて？それとも負けるとでも思ったからかしら？」　そういった瞬間。

ｶﾝｯ　ﾄﾞｯｻｯ

　「なっ。どうしてっ。私が負け…。なのね。ヘルすごいわ。さすがね！へ…る？ど、どうしたの？け、剣を戻しなさい！」

彼女はヘルとの稽古に敗れ、草むらに倒れた。ヘルの剣先は彼女の首元近くにあった。

　「姫！いや、フレデリカ様なぜ。剣を使えると言うことを黙っていらしたのですか。あなたは本気を出しましたか？…。あなたは一体何者ですか。」ヘルはそういった。怯えてるようにも見えた。


　「…。言えない。私は、私は！この国のものでないなんて言えない！私はあの子の代わりに姫をやってるなんて。言えなかった。確かに私はこの国のものでないけれど、姫ではあったわ。あなたがここに来る前、事件があったの。この国は穏やかな場所。けれど、一度荒れたときがあったの。その時に、この国の姫が皆を助けて亡くなったの…。」

　「フレデリカ様…。その姫の名は？」深刻そうに答える。

　「フレデリカ・グランダよ。父も母もグランダってついてるからね。私があの子の全てをやっているわけ。正直そろそろ辛い頃だったの。偽りの名前で、偽りの姿でって…。」姫は顔を赤くして答える。今にも泣きそうな顔で。

　「で、では。あなたの名前は…。」
　「本当の名は、　ネストラ・ミランアシュリーよ。あなたも知っているでしょう？ミランアシュリー家は代々伝わる多彩な音。そして、ミランアシュリー家は色々な王都の中でも一番といわれてもおかしくないほどの、地位と権利、それに、誇られている国ということを。」


そう。彼女の本当の名は、ネストラ・ミランアシュリー。　ミランアシュリー家は代々音を受け継ぐもの。そして、自分の身を守るため、姫も王も剣の稽古はつきものであった。元々剣なども天才肌のネストラには、すぐに習得できていた。


　「今の立場で言うのもおかしいんだけども、もう少ししたらパテス軍が来るわ。音は色々な状況、状態が掴めるの。ヘルはどうするの？逃げるの?それとも戦うの？」

　「私は、皆を守りたい。例えあなたが他の国の姫でも今まで私の姫であったことには変わりはない！姫も行くのでしょう？戦いに。」ヘルの決心が伝わってくる。姫、ネストラは

　「そうね。もちろんよ！まずは皆に伝えなければね。」