恋はしょうがない。〜幸せな結婚式〜
恋はしょうがない。〜幸せな結婚式〜

結婚式 1







桜野丘高校の離退任式の日は、暖かい日射しがまぶしいくらいに降り注ぎ、春の麗らかさを存分に感じられる日となった。


例年通り、体育館で離任式は行われ、それが終わると、担任が離任しないクラスの生徒たちは教室へは入らず、そのまま放課となる。


体育館から職員室へ戻る渡り廊下。
澄んだ空気を透して射す、春のまぶしい光を目を細めながら見上げ、真琴は春特有の悲しみに心を震わせる。


1年とちょっと経てば、またここに戻って来られるのに、こんなにも寂しくて仕方がない。

たとえ戻って来ても、1年生の時から一緒に過ごしてきた生徒たちも、そして最愛の古庄も、この学校にはいない…。


卒業生を送り出すのでもなく、離任者として送り出されるわけでもない、そんな中途半端な寂しさが、却って真琴の心を切なくさせていた。


ジワリと目頭を熱くさせながら、渡り廊下を再び歩き始めた時に、真琴は数名の生徒達から拉致された。


「…何?!どうしたの??」


有無を言わさず両脇を抱えられ、真琴は思わず戸惑いの声を上げる。


「いいから、先生。こっちに来て」


その中の生徒の一人、有紀がニッコリして真琴の腕を優しく引っ張る。有紀をはじめとする一同は、真琴の体を気遣いながら階段をゆっくりと上っていった。



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