恋はしょうがない。〜幸せな結婚式〜




「なあんだ、残念。真琴ちゃんと誓いのキスができると思ってたのに♡」



――…ば、バカ野郎!!冗談じゃねえよ!!



と、シャレにならない晶の言い草に、古庄は心の中で悪態を吐いた。


そんな古庄の思惑はよそに、その晶の微笑みは、一瞬でそこにいた者たちの心を虜とする。
この晶の前では、さすがの古庄も霞んでしまうが、この姉弟が正装をして並ぶ光景は、そこにいる女子たちの目の保養になった。



「何で、そんな男の格好…しかも、タキシードなんて着てくるんだよ?紛らわしいだろ?」


怪訝そうな顔をした古庄から尋ねられると、晶はもっと面白そうに笑った。


「結婚式なんて着ていく服がないから、貸衣装屋に行ったんだ。女の服はどれも合うサイズのものがなかったし、これが一番私に似合ったんだ」


と、悪びれずに晶が腰に手を当て決めポーズをすると、女子生徒の間から「きゃあ♡」と声が上がった。


相変わらずの変人ぶりを見せる自分の姉に、古庄は呆れてものも言えない。そんな古庄に、甲斐甲斐しい女子たちが走り寄ってくる。



「さあ、古庄先生。もう賀川先生も待ってるから…」


そう声をかけられた古庄は、レッドカーペッドを歩いて、しだれ桜の下に設えられた小さなステージの上に立つ。


タキシードを完璧に着こなしている古庄のその姿を改めて見て、一同はホレボレとして溜息を吐いた。



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