恋はしょうがない。〜幸せな結婚式〜
真琴は、転ばないように有紀たちに手を引かれながら、正面玄関までやって来た。
そこで待っていた父親は、娘の可憐で晴れやかな姿を一目見て、目を丸くし息を呑んだ。
父親と花嫁、お互い照れたように視線を交わすと、腕を組み居ずまいを整える。
「それでは、いよいよ新婦の入場です」
司会の女の子の声が響き渡り、皆の視線は正面玄関へと向く。
正面玄関のドアが開かれ、一身に視線を集める真琴の瞳が捉えたもの――。
それは、自分を見つめてくれている群衆ではなく、絢爛に咲き誇るしだれ桜だった。
そして、その花の下から自分に優しい眼差しを注いでくれている古庄の姿…。
その、双方が織りなすあまりの美しさに、真琴の息が止まった。
それはまるで、古庄に出逢ったあの日、ラグビージャージを着てこの桜の下に佇んでいた古庄が、そのままそこで待ってくれているようだった。
古庄が振り向こうとしていたあの時は、まさに今この瞬間に繋がっていたのだと、思わずにはいられなかった。
真琴は父親と共に、雨のように枝を落とすしだれ桜の花の下へ足を踏み出した。
皆が目にしたのは、純白のウェディングドレスを身にまとい、ヴェールを被った真琴の姿。