恋はしょうがない。〜幸せな結婚式〜
真琴の父親にエスコートされ、春の暖かくまぶしい陽射しの下に出てきた真琴の美しさに、言葉にならない感嘆の声が上がった。
吹奏楽部による厳かな演奏の中、一歩一歩レッドカーペットを踏みしめて、古庄のもとへと歩いて行く。
淡いピンクのしだれ桜の花々とその香りに包まれて、一歩一歩自分に近づいてくる真琴を、古庄は食い入るようにじっと見つめ続けた。
その光景に心が震え、古庄が我を忘れ、まるで吸い寄せられるように立っていたステージを降りた時、真琴はレッドカーペットの中ほどで立ち止まった。
祝福の眼差しと拍手。
優しい同僚と生徒たちの心に、真琴の胸は詰まって、涙が我慢しきれず溢れて来る。
体が震えて視界も利かなくなり、ブーケに埋めた顔を上げられなくなってしまった。
真琴の心情が、響きあうように古庄の胸にも伝わってきて、古庄が思わず真琴に駆け寄ろうとした時、列席する皆の中から一人の男の子が飛び出してきた。
「お姉ちゃん…!!お姉ちゃん!!」
そう言うや否や、胸元にブーケがあることなんてお構いなしに、正志は真琴に抱きついた。
突然のことに驚いたのは、真琴だけでなく観衆も同じで、吹奏楽部も思わず演奏を潰えさせてしまった。