恋はしょうがない。〜幸せな結婚式〜
「わっ!あの子、賀川先生の弟?」
「カワイイ~~♡」
一瞬の静寂の中、事の成り行きを見守っている生徒たちの中から、声が上がる。
突然の正志の登場に、真琴は我に返り涙を拭った。
「…お姉ちゃん!…僕、…僕。今までお祝いを言ってなかったけど、今日は本当におめでとう!」
「…た、正志ちゃん…」
間近にある正志の顔を見つめ返すと、その頬はもう既に真琴と同じように涙で濡れていた。
「さあ、正志。もう元の場所に戻りなさい」
観衆から注目されながら、横にいた父親からもそう諭されて、正志はしゅんとしてうつむいた。
そんな正志を可哀想に感じた真琴は、ブーケを持った方の腕を正志の腕に絡ませた。
「じゃ、残りは、正志ちゃんも一緒に…」
真琴がそう言って微笑むと、正志もニッコリと満面の笑みで応える。
それから、異例の3人でヴァージンロードを歩き始め、吹奏楽部も再び演奏を始めた。
3人はいっそうの拍手に包まれながら、古庄のいる場所まで辿り着いた。
近くで改めて見る真琴の花嫁姿に、古庄からその言葉が口を衝いて出てくる。
「…真琴。ああ、…すごく綺麗だ…!」
こんな風にお化粧をして着飾った自分を見せるのは初めてなので、真琴は少し恥ずかしそうに、ヴェールの中から涙の残る目で古庄を見つめ返した。