恋はしょうがない。〜幸せな結婚式〜
「それではここで、賀川先生のヴェールをお上げいただき、 永久の愛を込めて、誓いのキスを交わしていただきましょう!」
おおおお―――――――っっ!!
観衆から思わず声が上がる。
好奇な視線が皆から注がれ、古庄と真琴は赤くなって固まってしまった。
「……生徒の前で、そんなこと……」
特に真面目で奥手な真琴は、皆の目の前でキスすることを思い描いただけで、赤くなった顔を青くさせ、縮み上がって首を横に振った。
けれども観衆の目は、もう既にキスへの期待に輝いている。特に悪ノリしがちの男子生徒は、異様なほどの盛り上がりだ。
「神聖な儀式だから、そんな風に意識することはない」
近くにいた校長が、そう言ってなだめてくれる。
「そうよ。ちょっと唇がくっつけばいいんだから」
石井からもそう声をかけられて、真琴は古庄と視線を交わした。
何よりも頑強にそれを固辞してしまうと、生徒のみんなが作り上げてくれたこの場をシラケさせてしまうだろう…。
意を決するように、古庄は真琴に向き直って優しく笑いかけると、ヴェールに手をかけた。
真琴も古庄にリードされて、お辞儀をするように腰をかがめてそれに応える。