恋はしょうがない。〜幸せな結婚式〜
心臓がドキドキして口から飛び出してきそうなのに加え、皆からの視線に耐えかねて、真琴は棒立ちになって目を閉じた。
水を打ったような静寂の中、古庄が近づいてくる気配を感じ、両腕に手が添えられる。
…そして、唇に温かく柔らかいものが触れた。
その瞬間、真琴の激しい動悸の中に、トクン…と別の感覚が脈打つ。
同時に、その光景を見つめていた佳音の理子の平沢の……その他古庄に憧れ密かに恋していた多くの女子たちの、心が一斉に切なくキュッと絞られた。
この「儀式」は一瞬で終わるはずだったのに、古庄はなかなかそれから動こうとしない。
「…………!?」
真琴は唇を重ねられたまま、パチッと目を開いた。
体を硬くして身をよじらせても、古庄は真琴を拘束してキスをやめてくれない。
「………ふ、古庄ちゃん……」
「……な、長ぇよ……」
そんな風に、男子生徒たちがざわめき始めても、古庄は先ほど聞いた真琴の告白がまだ心に響いていて、キスすることに熱中し我を忘れている。
見るに耐えかねた校長が、顔を赤らめて口に握った手を当てた。
「……ウォッホン!!」
校長の咳払いが聞こえた途端、ハブロフの犬の古庄は我に返り、弾かれるように唇を離した。