恋はしょうがない。〜幸せな結婚式〜
普通ならば自然に祝福の拍手が起こるところだが、気恥ずかしいような気まずい雰囲気立ち込めて、あたりはシン…として沈黙が漂う。
真琴もキスをする前以上に恥ずかしくなって、目を伏せて小さくなった。
けれども、古庄はそんな周りの反応などお構いなく、真琴にニッコリと幸せに満ちた笑顔を向けてくれる。
「…そ、それでは」
気を取りなおすように、司会の女の子の声が響いて、その場が仕切り直される。
「古庄先生と賀川先生には、皆様の前で固く結婚の約束を交わしていただきました」
その女の子の高校生とは思えない落ち着いた声を聞いて、真琴も幾分冷静さを取り戻した。
「お二人のご結婚、確かにご承認いただけましたら、皆様方の祝福の拍手をお願い致したいと思います」
朗らかなアナウンスに誘われるように、校長をはじめ石井や谷口、戸部や2年部の学年主任、教師の仲間たちが意思を表明して大きくて明るい拍手を始める。
それから男子と女子の生徒たち。古庄と真琴の家族たち。
正門脇のしだれ桜を取り巻いて、前庭に集まっていた大勢の列席者たちが、その感動を表すように一心に絶え間ない拍手を贈った。