恋はしょうがない。〜幸せな結婚式〜
「だって、ドレス着るんだもん」
「えー?ドレスは最後でしょ?先に髪やメイクをするんじゃなかった?」
「あっ、そうか」
「でも、髪をセットしたら、服脱げなくなるんじゃ…?」
真琴を囲んでああだこうだ言っている生徒たちに業を煮やして、平沢がもう一声かける。
「賀川先生のその服は、後からでも脱げそうだから、ケープだけかけて、ここに座ってもらって」
平沢が指し示した椅子の側には、すでに美容師が道具を並べて待ち構えていた。
真琴は借りてきた猫のようにそこに座り、ただ黙って、美容師からされるがままになった。
「ほら見て!先生。こんな感じにしてもらうからね!」
と、一人の生徒がウェディング雑誌の可愛らしい花嫁さんの写真を見せてくれる。
今から自分がこんな風に変身するとは、真琴は俄かに信じられなかった。
かたや生徒たちの方は、真琴の周りでせわしなく動き回っている。
「先生に着けるアクセサリー、どこに置いてる?」
「準備室の戸棚の中に入れておいたよ!」
「靴は?」
「靴はドレスの側に…。先生、妊婦さんでも大丈夫なように、ヒールの低い靴にしたからね!」