【短編】スキキライダイスキ
「松原さん、ごめんね?仁南が迷惑かけて」

「え?」

「仁南。松原さん誰とも話したがらないって有名じゃん。そこに仁南みたいな煩いのが行ったら大迷惑でしょ?」

少し、驚いた。

へえ、私ってそんな知名度があったのか。

そして桃ちゃん気遣ってくれてたのか。

「…そんな噂、知ってるよ?」

「だったらさっさと謝って行くよ」

桃ちゃんはもう一度私に頭を下げる。

「ごめんね松原さんコイツ頑固で」

「あ、いえ…」

私の返事に、日向がチラリとこちらを見る。

───え。何、その反応。

日向は驚いたように目を見開き、またそれを伏せた。
まるで悲しいみたいに。

でもそれは一瞬のこと。

「まっこれから宜しくね、松原さん♪」

いま見た光景が幻覚かと思うような軽さで去っていった。

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